2011年11月5日土曜日

TPP考

TPPについて言えば、賛成派も反対派も浅はかな表面的なデメリットを強調してお互いに非難するだけで、享受できるメリットと払うべきコスト、引き受けることになるリスクについての洗い出しや分析をしたものを見たことが無い。行動を起こすのに、達成する目標と引きうけるべきリスクと払うべきコストを現実的に分析して戦略的に対応できれば恐れるものは無いのだけれど。

基本的な国際経済学の基礎知識としても貿易がほとんどの国の国富を増すことは説明されている。それでもまだ、なんか変だぞと思うのは、そもそも海に囲まれて自給自足でやってきた日本が、日々の生活の中でさえ国境線を奪い合うような環境の下でしのぎを削ってきて、5年先はおろか、来年や来月、明日にだって隣国が国境を越えてやってくるかもしれない国々の交渉や戦略に長けた国々の常識に本当について行けるのだろうかという不安。

日本におけるTPPの問題は、単に物事の良し悪しと言うよりも、普天間基地問題と同様にそれが内政と密接にかかわる外交問題であるがゆえに、政争の具と化して、本来議論すべき内容が議論されず、対外的な外交戦略を持たないままその時の内政の事情でたまたま決定した方向へそのまま突っ走ること。本来はその方向を修正したり補強する為の官僚組織が今は機能していないこと。

農業の事、薬事医療の事、知財の事、個別のメリット、デメリットの話を始めると総論賛成、各論反対となる。WTOからEPA、FTA、さらにTPPへと他国との交渉の方法やレベルが国債環境に於いて変遷してきているなか、政治レベルでのコンセンサス、国民レベルでの方向性の合意、議論がなされていない。世論の形成しようとしない?出来ない国なのか?

生産者としての立場での反対、消費者の立場での反対?韓国とアメリカのFTAは涙の不平等条約?総和としてのメリットとデメリットを検討する。これに加えて双方でのクリティカルな項目についての戦略的な対応を国家として検討して実行することが必要。池田さんはアグレッシブ、今のうちに先進国とした儲けておく。先進国としての先進的なサービス産業を輸出する。結論ありきの議論の展開には反対の立場の人間はついて行けないかもしれない。

堀さんのコメント。賛成も反対もあって当たり前。出来る議論を全て持ち出すことが大切。
何れを選択するにしても、個々の問題についてひとつひとつ戦略的な対応が求められ、たとえTPPに参加しなくとも政治的、否、国民的課題は我々に付いて回り、その戦略上の条件、前提が変わってくると言うだけの話。

池田信夫さんの「日米構造協議の教訓」(http://agora-web.jp/archives/1400555.html)の鋭い読み。日本はそんなに簡単には変われないし変わらない。変ってゆく世界の中で変わらない事のリスクや変わる場合のリスクの分析や対応、何を変えなければならないのか、大事なのはそういった議論をグローバルな世界的な視野をもって日本の国民全体としての国益の視点からすること。